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お知らせシンガポール2025年度予算について
2025年はシンガポール共和国の建国60周年の年です。建国記念日(National Day)にあたる8月9日には、60周年を記念する盛大なイベントが行われていました。さて、今回は、2025年度のシンガポール予算をご紹介します。
ローレンス・ウォン首相は「より良い明日に向かって共に歩む」と題した当該予算案において、シンガポールの国民の生活をいかに向上させ、今後の競争力をいかに強化していくかを目的とする経済施策を発表しました。国際的に政治や物価上昇により不安定な状況ではあるものの、2024年度は4.4%の経済成長率、労働収入の中央値は3.4%上昇したという報告がされました。2025年は1~3%の経済成長率を見込み、物価上昇率は1.5~2.5%となる見込みとの予想がされました。2025年度予算では、昨年と同じような個人所得税に対する減税制度やコスト増加に直面する法人に対しても減税制度が設けられています。その2025年度予算から、主な改正内容を紹介させていただきます。
【2025年度予算(税制関連部分抜粋)】
| 番号 | 税制改正の名称 | 現行の税制 | 新たな税制 |
| 1 | 賦課年度(YA)2025年度法人所得税(CIT)の50%、最低2,000ドルのTaxリベート | 該当なし | YA2025年度に法人所得税の50%リベート。 2024年にローカル従業員を雇用していればS$2,000のリベートを現金支給。 上記二制度を合わせた最大リベート額はS$40,000。 2025年第2四半期から適用対象企業は自動的に恩恵を享受できる。 ローカル雇用の定義はCPF掛け金を納付しているかどうかで判断する。 |
| 2 | 2025年度個人所得税(PIT)リベート | 該当なし | 建国60周年の一環として、すべての税務居住者に対し、税額の60%(上限S$200)をリベート。 |
| 3 | 国際展開促進(二重税額控除)制度(DTDi)の延長 | 市場拡大・投資開発費用の200%控除を可能にする制度。2025年末終了予定。 | 制度を2030年12月31日まで延長。詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 4 | M&Aスキームの延長 | M&Aを行うシンガポール法人は次の税制優遇を享受できる。 a) M&Aによる取得額の25%をM&A控除(最大S$40百万) b) M&Aにかかる費用の200%控除(上限S$100,000) 2025年末終了予定 | 制度を2030年12月31日まで延長。 |
| 5 | 所得税法13W条の拡充(株式譲渡益の非課税) | 13W条に基づく普通株式の売却から得る所得は、次の場合は非課税とする。 a) 20%以上保有、24ヶ月以上保有 b) 2012年6月1日から2027年末まで譲渡益が対象である | 制度の終了日を撤廃し、次のような制度の拡充が行われる。 優先株式の譲渡益も対象とする 持株判定をグループ単位で行うこととする 2026年1月1日以降の売却益に適用される。 詳細は2025年第3四半期に発表される。 |
| 6 | EEBRスキーム(Employee equity-based remuneration scheme)に基づき、持株会社もしくは特別目的会社(SPV)が新株発行を行う際の所得控除制度 | EEBRスキームに基づき、従業員に黄金株や発行済み種類株式を移管する場合には税額控除が認められる。 従業員に新株の発行が行われる場合は所得控除の適用なし。 | 新株発行にあたり、持株会社またはSPVへの支払いについて所得控除が認められる。控除額は次のいずれか小さい金額である。 法人が支払う対価の額 公正な市場価額、または市場価額がない場合は純資産価額 制度改正はYA2026年度から適用される。 詳細は2025年第3四半期に発表される。 |
| 7 | CSA契約(Cost-sharing agreement)に基づく革新活動支払に所得控除制度 | 所得税上2条の研究開発の定義に該当しない場合は所得控除不適用 | 承認された契約に基づく革新活動に対する支払額の100%を所得控除できる。 2025年2月19日以降の契約につき適用される。 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 8 | Land Intensification Allowance(LIA)制度の 延長・拡充 | 適格建物に対する資本性支出に対し初年度25%の控除 以後15年間にわたり、適格建物に対する資本性支出に対し5%の控除 適格建物の延べ床面積の80%は認可された者又は関係者により使用されている必要がある。関係者の持株要件は75%である。 | 制度を2030年末まで延長する。 持株比率の要件を75%以上から50%超に緩和する。 改正は2026年1月1日からのLIA申請に適用される。 詳細は2025年第3四半期に発表される。 |
| 9 | プロジェクト・インフラ金融に対する税制優遇の見直し | 税制優遇は次の通りである。 a) Qualifying projects debt securities(適格プロジェクト負債性証券(QPDS))から得る適格所得の免除 b) シンガポール証券取引上の上場する認可企業が適格国外インフラプロジェクト又は資産から受取る適格外国源泉所得の免除 2025年末終了予定である | 既存のQPDSは2025年末で終了。 適格負債性証券(QDS)スキームの様な税制優遇制度は、条件を満たす限り投資家が引き続き恩恵を受けることはできる。 2025年末までに発行されたQPDSへ投資した場合、QPDSスキームの要件を満たす限り税制優遇は継続して受けられる。 シンガポール拠点のインフラプロジェクトスポンサーを保護するため、外国のインフラプロジェクトに投資、資金融通する場合の所得免税は2030年末まで延長。 |
| 10 | 保険業開発(IBD)制度の延長・見直し | 関連スキームに基づく適格所得に対しては10%の軽減税率が適用される 2025年末で制度終了予定 | 制度を2030年末まで延長する。 さらに、2025年2月19日以降の関連スキームに対し15%の新税率を導入する。 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 11 | 金融業インセンティブ(FSI)制度における15%の追加税率区分を導入 | 10%または13.5%の軽減税率(適用スキームにより異なる) | FSIスタンダード、信託会社、本社サービス向けに15%の新税率を導入(2025年2月19日より)。 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 12 | 株式市場活性化策に基づく税優遇の導入 | 該当なし | シンガポールにおける新規上場企業とシンガポール上場市場の活性化のため、次のような法人税リベートを導入する 新規上場会社に足して法人税リベート ファンドマネージャー新規上場への5%軽減税率 シンガポール上場株に投資するファンドの関連所得免税(詳細は附属書C-2参照) |
| 13 | シンガポール上場REIT(S-REIT)への所得税優遇の延長と拡充 | ・S-REIT内で生じた所得と同年度に90%以上を配当した場合の税の透明性 ・S-REITsが得る外国源泉所得の免税 ・個人が受け取るS-REITsの配当免税 ・非居住非個人投資家への10%源泉税(いずれも2025年末終了予定) | シンガポール市場への上場促進、世界的なREITハブとしての地位を維持する目的で、2030年末まで制度を延長する 税の透明性対象にコワーキング収入等追加(2025年7月~) 2025年2月19日より改正を施行 a) 外国源泉所得の範囲の拡大 b) 要件が緩和され適用対象がS-REITsが保有するすべての法人がシンガポールの税務上の居住法人であること c) 株主借入の返済、資本の払戻を含めた分配方法の緩和 d) シンガポールのサブトラストが剰余金をS-REITsに配当する際に、収益から営業経費を控除可能 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 14 | REIT ETF(S-REIT ETF)に対する所得税優遇の延長 | 税透明性・個人の受取配当免税・10%WHT(2025年末まで) | 税透明性の終了日撤廃、10%WHT優遇は2030年末まで延長 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 15 | S-REITsおよびインフラ事業、船舶及び航空機リース事業を営むSingapore-listed Registered Business Trusts(RBTs)へのGST還付制度の延長 | SPV設立や資金調達等に係る営業費用にかかるGSTの還付(控除)(2025年末まで) | 2030年末まで延長 |
| 16 | ベンチャーキャピタル向けインセンティブの終了 Venture Capital Fund Incentive (VCFI) Venture Capital Fund Management(FMI) | VCFI: 所得免税 / FMI: 管理報酬に5%軽減税率(2025年末まで) | 2025年末で制度終了。今後は他政策で支援予定。 |
| 17 | 船舶・コンテナ金融支援制度の導入 Approved Shipping Financing Arrangement(ASFA) | 該当なし | 2031年12月末までに締結された契約に基づき、非居住者である債権者へ支払われる利息やリース料に対する源泉税免除(2025年2月19日以降) 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 18 | 海運業インセンティブ(MSI)の延長・拡充 | 海運業に対する免税措置やトン数税制、源泉免除などの優遇措置(2026年末まで) | 2031年末まで制度を延長。再エネ関連サービスや船舶を含め制度が拡充される 詳細は2025年第2四半期に発表される。 |
| 19 | コンテナオペレーティングリース料の源泉税免除延長 | 非居住者への支払免除(2027年末まで) | 2031年末まで延長 |
| 20 | MSI対象の船舶・コンテナFLリース料のWHT免除延長 | 非居住者への支払免除(2028年末まで) | 2031年末までに締結された契約に適用を延長 |
| 21 | Matched MediSave Scheme(MMSS)対象拠出に対する控除廃止 | CPF加入者が自己または適用対象者に対するCPF追加拠出に対する控除制度 | 政府がMMSS制度の延長を発表したことから、2026年以降の追加現金拠出に対し控除適用せず MMSS等の対象にならない追加現金拠出に対しては最大$16,000の税額控除を受けることができる。 |
| 22 | 非居住仲裁人のWHT優遇終了 | 非居住専門家は総収入の15%の源泉税か所得に対する24%の所得税課税を選択することができるが、現行制度では源泉税が10%に軽減されている(2027年末まで) | 2027年末で終了。 非居住専門家が行う仲裁事業に対しては、今後は他政策で支援予定。 |
| 23 | 非居住調停人のWHT優遇終了 | 非居住専門家は総収入の15%の源泉税か所得に対する24%の所得税課税を選択することができるが、現行制度では源泉税が10%に軽減されている(2027年末まで) | 2027年末で終了。 非居住専門家が行う調停事業に対しては、今後は他政策で支援予定。 |
| 24 | 電動重量車両(Electric Heavy Goods Vehicles, HGV)、バスへの定額道路税導入 | 電動重量車両やバスは適用対象外 | 2026年以降登録される3.5トン以上の最大積載重量のある従量車両にも適用対象とする。電動バスについても最大積載重量に応じて課税される 2025年末までに登録された該当車両は2029年1月1日は免税とする。 |
About the writer
片岡 宏将
【経歴】
静岡大学大学院人文社会科学研究科修了。2002年アタックス税理士法人に入社し、法人の税務顧問業務を中心に中小企業から上場会社まで幅広い法人を担当。
クライアントとの直接対話をモットーに、税務顧問、国際税務業務、税務コンサルティング業務等のプロジェクトマネージャーに従事。2019年5月よりASA Professionals Singaporeで、日本とシンガポール間における法人税や資産税にかかるクロスボーダー案件を担当。
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