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よくある税務相談~海外移住編~

08.01.2026

【はじめに】

新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
今年は、天災などなく平穏な年であり、経済状況を含め皆様にとって午年らしく「飛躍」の年になることを祈願します。

今年のニュースレターでは、よく受ける質問や相談の中から留意頂いた方がよい論点を紹介します。

・海外に移住する際に留意すべき税務論点は?
・海外に10年いたら日本の相続税、贈与税はかかりませんか?
・日本滞在日数を年間183日以下にすると日本の非居住者ですよね?
・日本居住者ですがシンガポールに法人を設立して資産運用すると日本で課税されますか?
・日本に帰国する際に留意すべき点は何ですか?
・日本に帰国後もプライベートバンクの口座などを継続保有する予定ですが日本で課税されますか?

このようなテーマでお届けしていきます。

該当するニュースレターまで待てないという方は、刷新したホームページに問い合わせ機能を追加しました。有償になりますが、個別にご相談がある場合はお気軽にご連絡ください。
https://asaprofessionals.sg/en/contact/

【2026年度税制改正大綱を受けて】

昨年12月19日に2026年度の税制改正大綱が公表されました。自由民主党と日本維新の会という新しい連立の枠組での初めての大綱になります。「強い日本」「世界で輝く日本」の実現を目指して、様々な改正項目が盛り込まれています。

所感としては、昨今の物価上昇が国民の生活に影響を与えているという点から、「公平性」の確保を重視した所得税関連の改正が非常に多いことがあげられます。

・基礎控除の見直し(消費者物価指数の上昇率を反映)
・給与所得控除の最低保障額の見直し(同上)
・食事支給やマイカー通勤に係る手当の所得税非課税限度額の引き上げ
・住宅ローン控除の拡充

一方で、高所得者に対して、課税強化の傾向が強い税制改正案になっています。

[所得税関係改正案]
◆極めて高い水準の所得者に対する負担の適正化措置の見直し(2027年分の所得税から適用)
・基準所得金額(各所得を合算した金額)から控除する特別控除枠を3.3億円から1.65億円へ大幅引き下げ
・適用する税率を22.5%から30%に大幅引き上げ
◆ふるさと納税の控除限度額導入

[相続税・贈与税関係改正案]
◆貸付用不動産の評価方法の見直し
・被相続人等が課税時期前5年以内に取得等した貸付用不動産については、課税時期の通常の取引価額に相当する金額により評価
・信託受益権等に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産についても課税時期の通常の取引価額に相当する金額により評価
◆教育資金贈与の廃止(2026年3月末で終了)

なお、大変大きな注目を集めている暗号資産に対する課税に関連した改正ですが、金融商品取引法等の改正が前提となっていることから、譲渡時の分離課税や損失繰越の制度化実現はもう少し先になりそうです。

【海外移住をご検討されている方へ】

海外での事業展開、お子様の教育、資産運用、リタイア後のセカンドライフなど様々な理由で海外移住を検討されている方は多いと思います。また、前述の課税強化の傾向を受けて、移住を検討されている方も今後出てくると想定されます。

では、海外移住をする場合に、税務面ではどのような論点を留意すべきでしょうか。各論点の深堀は今後のニュースレターで順次取り上げるとしまして、今回は主な税務上の論点出しをしてみます。

1.出国日の判定
単純に航空券を手配し日本を出国するだけではなく、税務面では、日本の非居住者としての様々な事実構築をする必要があります。
・どれくらいのスパンで海外に移住をするのか
・移住の目的は何か
・移住後における日本滞在日数はどの程度か
・日本の仕事はどうされるのか、引き続き給与を日本の法人から受け取るのか
・ご家族も移住するか
・ご自宅、銀行や証券会社の口座はどうするのか
・住民票はどうするのか

このような点を整理し出国する必要があります。移住先でのビザ取得などに必要な期間は除き、日本の税務論点の整理、対応のため、半年から1年間は準備期間を設けることをお勧めします。

2.国外転出時課税(出国税)の対応
有価証券等を1億円以上保有している方が対象になります。保有する有価証券等の評価、税額の計算、納税管理人の選任、納税資金の準備、納税猶予の検討など、検討および対応すべき論点が非常に多い制度になります。特に自らが経営される会社の株式(非上場株式)を保有される場合は、株式評価の論点や納税資金の確保の論点で綿密な準備と対応が必要になります。

3.海外移住する年度の日本での所得税申告
給与所得で年末調整の対象の方は、勤務する会社が年末調整を行うことにより、所得税の対応は完結します。年末調整の対象ではない方は、その他の申告すべき所得がある方は確定申告と納税をした上で出国する必要があります。申告や納税の期限は、納税管理人を選任するかどうかによっても異なるため、顧問の税理士さんにご相談をした上で税務対応をお願いします。

4.移住先の移住準備
シンガポールを例にとると、就労ビザを取得して移住するケースが一般的です。シンガポールの会社へ転勤や転職するケース、ご自身の会社を設立して就労ビザを得るケースが該当します。
就労ビザを取得したものの、移住前に就労ビザ発行法人から給与を受け取ると、当然のことながら日本で所得税課税が生じます。日本の所得税は全世界所得課税を採用しています。移住準備段階で、移住先の法人との雇用契約はいつ締結するか、給与はいつから支給されるかを確認する必要があります。

【おわりに】

今回は、よくある税務相談~海外移住編~と題して、移住検討時における主な税務論点をお届けしました。次回、税務のテーマを取り上げるニュースレターは5月号になります。その際は、海外移住時における頻出論点である「国外転出時課税(出国税)」を取り上げる予定です。

シンガポールへの移住をご検討にあたり、移住や日本での税務対応に関する専門家をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。日本における税務対応に係るコンサルティングに加え、シンガポールでの法人設立やビザ申請、会計業務、税務申告など一連のサービスを日本語でワンストップ対応しています。

About the writer

ASA Professionals Singapore
片岡 宏将
ASA Professionals Singapore
片岡 宏将

【経歴】
静岡大学大学院人文社会科学研究科修了。2002年アタックス税理士法人に入社し、法人の税務顧問業務を中心に中小企業から上場会社まで幅広い法人を担当。

クライアントとの直接対話をモットーに、税務顧問、国際税務業務、税務コンサルティング業務等のプロジェクトマネージャーに従事。2019年5月よりASA Professionals Singaporeで、日本とシンガポール間における法人税や資産税にかかるクロスボーダー案件を担当。

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